今回は、60代元建設会社勤務(男)さんが、工事現場で行っていた騒音対策についてのお話をご紹介してみます。騒音問題解決で大事なことは、1.加害者被害者が歩み寄る、2.騒音発生時間の話し合い、3.良好な人間関係を保つ、などがあるそうです。また、防音対策として、1.防音シート、2.防音パネル、3.低騒音型機械、4.無駄な騒音を出さない工夫、5.騒音教育、などもあるそうです。
騒音問題は加害者被害者が歩み寄るのが大事
60代男性無職(元建設会社勤務)関東です。
私は長年建築工事にかかわってまいりました。ですから、現場監督と言いながら近隣の苦情処理係でもありました。時には後者の役割が大だった事もあります。中でも騒音問題は職業柄宿命ともいえるものでした。
基本的なスタンスとして騒音を防止するための対策は講じる。法的な措置を講じる。例えば、日本全国どこで工事するにしても騒音規制法、振動規制法に定められた届け出を提出し、それに沿った防止措置を講じなければなりません。さらに、地方自治体の定める施行令に準じて同様な手続きを行う。などです。
しかしながら、建築工事を無騒音無振動で行う事など無理な話です。ですからどこかで妥協点をみいだし、加害者被害者が歩み寄るといった解決策が実態です。
工事(騒音発生)時間の話し合いが大事
本来、人は朝起きて夜寝る。という基本的な習慣を有していますが、社会の多様性の中で夜働くといった生活習慣も珍しくなくなりました。工事に伴う騒音は日中のものです。つまり、皆起きて活動しているという事を前提に対策をとっています。しかし、朝夜勤から帰ってきて寝たばかりのところで騒音を受けてしまうといった事態が生じます。つまり、夜中の「騒音」です。
保育園、小学校、病院等騒音に敏感な施設があります。特に保育園が近隣にあると、説明会時にお昼寝の時間は工事をストップしてください。と必ず言われます。つまり、12時半から14時半まで工事を中断してくれという事です。12時から13時までは昼休憩ですから問題ありません。それからさらに1時間半も工事出来なかったら仕事になりません。
そこは話し合いです。こちらは昼休みをずらして、昼寝も30分切り上げてもらい、お互いに譲歩して妥協点を見つけます。スタートで躓くと工事もやりにくくなりますし、いがみ合いにもなりかねません。
工事現場での騒音対策
工事をしていく上で講じたいくつかの対策を紹介します。
まず、足場組をした場合、通常の防炎シートを防音シートに取り替えます。これは防音という名の通りシートの生地が厚手で防音性が高いだけでなく、合わせ目が重ね仕様になっていて音漏れを防ぎます。音だけでなく、生地が丈夫だという事もあり埃はもちろん多少の飛散物を遮るといった効果もありますので重宝されています。更に、解体工事等を伴う場合、防音パネルを設置しより防音性を高めます。
さらに、工事に使用する重機・コンプレッサー類も無騒音型を使用することが法的に義務付けられています。その上、それらの重機オペレーターに対しても必要以上の騒音を発生させない等の教育を新規入場時、そして、定期的に行うシステムが取られています。例えば、不要な鉄板をゴミボックスに入れる時に、入れるのと投げるでは発生する音が違います。
人間の会話も騒音の一種です。作業中は仕事を進める上での打ち合わせ以外の会話はしないという決まりごとも徹底されています。
建築現場はいくら周囲を頑丈に囲っても上から音は漏れてしまいます。屋根を取り付けるには大金がかかってしまいます。ですから、可能な限りの騒音対策を施し、作業員一人一人に対して騒音防止に努めるという意識を共有し、その上で、責任者がその都度訴えていく。
これらが、今できる最善の騒音問題の解決策ではないかと考えます。
騒音問題は良好な人間関係を保つのが大事
こういった経験があります。
都内で10階建てSRC造の事務所ビルをリノベーションして特養老人ホームに用途変更するといった概要の工事でした。内部に関してはスラブ・柱・梁を残して全撤去です。階段の位置が変わるという事でコンクリート造の階段も撤去しました。
外部は手つかずでしたので、まだ良かったのですが、解体工事に2ヶ月を有しました。勿論、近隣挨拶等でマンションの一軒一軒を当たりました。役所に特定建設作業実施届を提出し最低限のやる事はやって工事に着手しました。
ちょうど工事も半ば過ぎた頃、向かいのマンションの方から苦情の電話がありました。訪ねてみると、苦情ではなく懇願でした。「飲食店を経営していて朝まで営業し、帰ってきて寝る頃、ちょうど工事が始まる。家にいられないので出かけたりしてしのいでいる。いつになったら終わりますか?」といったむしろ助けてくれコールでした。
工事の進捗状況等説明し、騒音のピーク時間帯を細かく説明し、話をしていると、寝入る時間帯の騒音が一番応えるとの事だったので、始業時間を15分遅らせれば対応できる事が解りました。次の日からそれを徹底しました。それ以来彼からは、その種の連絡はありませんでした。
騒音を発生する工事がおおかた終わった時、彼に工事の協力のお礼をと訪ねました。すると、彼は「音がうるさいのは我慢できます。ただ、騒音で迷惑をかけているのに知らんぷりしているその傍若無人な態度に我慢ができません」と言い、私が迷惑をかけない様真摯に対応してくれた事に対して敬意を表してくれました。
所詮、どんなうるさい音も気心の知った友達が出していれば音楽に聞こえ、たとえ静かな音でも、人間関係が保たれていない人から出ていれば耳障りな音になってしまいます。
対策といっても、どういう策を講じるかハード面ではなく、どういった思いで対応していくかといったソフト面を重視していかなければなりません。